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2009年03月15日

桜の花の満開の下1

『桜の森の満開の下1』
 坂口安吾(翻案:早浪討矢)
 

 
 桜の花が咲きはじめると、人々は酒をぶらさげたりダンゴを食べながら花の下にでかけ、やれ絶景だの春らんまんだのと浮かれて陽気にはしゃいでいますが、これは嘘まやかしです。

 なぜなら、大昔の人々は桜の花の下を怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いもしませんでした。

 江戸時代になってからは、桜の花の下といえば人間がより集って酒を飲んでケンカしていますから、陽気でにぎやかなものだと世間は思いこんでいます。
 でも、桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になるのです。
 能の物語にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて、子供を探すうちにいよいよ発狂し、桜の花の満開の林の下へ来かかると見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて、狂い死して花びらに埋まってしまう。
 なんて話もありまして、桜の林の花の下に人の姿がなければ、それはそれは怖しいばかりなのです。


sakura.jpg



© 早浪討矢 | Comment(0) | 日々のこと
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